表題のような質問が寄せられましたので、ここで解説します。なお昨日までの二日分の記事も、今日の記事の前フリですので、☚のバーナー「ペレットストーブ」から飛んで読んでいただくと一層理解が進むと思います。
木を燃やすには、高温と酸素が必要です。すぐには高温部分が広がりませんから、扇いだり、吹いたりして自分の熱で燃焼を広げる状態にすれば、連続燃焼が続きます。
その酸素を送り続けるという機能を「煙突」が担い、高温を維持して燃焼を連続させるという機能を「本体の箱」が担うわけです。暖房としての薪ストーブはこの木が燃える「放射線」であぶられた鉄が発する「輻射熱」で暖をとれるわけで。開放型の暖炉が見た目より暖かくないのは、放射線メインで輻射熱が少ないからです。しかし燃えれば終わりではなく、燃焼が進みすぎると早く燃え尽きてしまうので、今度は酸素量を絞って燃焼をコントロールするのが薪ストーブです。ここまでが基本編。
さっき「扇いだり、吹いたり」と書きましたが、その手間を簡略するために、焚付(表面積が広く、空気が通りやすく、熱を伝え安い)を使い、空気レバーを全開にして・・・火が回ったら、逆に燃えすぎないように今度は空気を絞って、火力が落ちてくれば、また燃料を加えて・・・・と人間の方も燃焼動作に加担しなければ上手く燃えてくれません。薪というのは燃えづらい形状ですが、火室全体が高温になることで燃焼しやすく熱効率も上がります。しかしこうした状態になるまでに最低1時間位はかかります。
これに対してペレットストーブは、電気つまりファンを使うことで着火後数分で、完全燃焼状態になり、定量を上から燃焼室に落とす(30秒で10粒ほど)ことで燻りもせずに良好な燃焼状態が継続します(焔が小さくても最大熱量を常に発揮している状態)。また燃焼ポット内(掌に乗るほどの大きさ)で燃焼するので薪ストーブのように、過剰燃焼熱などによる本体の傷みの心配が少なく、計算された酸素量と燃料量で燃焼が無調整で実現しているため、煤などの発生が極小です。誰もついていなくても、電動で燃料供給するので10数時間燃料切れるまで黙って燃え続けます。
このペレット燃料も粒状のためこのまま薪ストーブにれると、山状になってしまい、内部に空気が入りづらく完全燃焼しません。燃えても灰が酸素を遮断するので、燻るだけになってしまいます。つまり木の持つ熱量が発揮できません。
まあ実際は逆でして、ペレット状にしてそれを燃料の統一規格にすれば、輸送コスト、燃料の質の均質化、燃料供給の仕組みの統一化、燃焼効率の向上などが望まれる、と発展してきたのがペレットストーブの歴史なんですね。その過程での電動化は、失うことより得ることが遥かに多かったのです。
初期のペレットストーブは薪ストーブで燃やそうとして「失敗しました」。昨日紹介のペレットグリルは首を煙突にしたことで、デザインと機能を上手く融合した部分が「肝」なんですが、燃料タンク内の燃料を金網状ホルダーに収めたことが「ミソ」でして・・・・。燃料表面積が増えて燃焼部分が増え、燃えた灰は即座に網目から下に落下、何時でも酸素が燃焼部分に供給され、重力により自然と燃料は落下(供給)してきます。
それでは・・・・・KIRINSANの仕組みでストーブを作れないか、と誰でも考えるんです。ただクリアーするべき課題は多い。野外で使うグリルだから許容されている場分が多いんです。
1 火力の調整ができない。燃料は重力任せ、酸素も燃焼任せ なので。
2 燃料タンクが小さすぎて供給が忙しい(満タンで20分燃焼、15分ごとに足し忘れなければ何時間でも燃焼継続)。大きくすると詰まりなどの問題が発生。
3 タンクが小さいので、燃料が少なくなると逆火(未使用燃料で蓋しているうちは良いが、それが薄くなると上部にも炎が回る)する。タンクを大きくして逆火すると火災に繋がり危険。
それでも民間レベルではいろんな改良チャレンジがされております。
ペレットストーブはなんだ電気使うのか、と多くの方に言われます。停電の時使えません。それでも上述したように、電動化によって薪ストーブを上回る使い勝手と、燃焼効率、熱効率を持っており、体感的にはより少ない木質燃料で薪と同じ暖かさが得られます。 煙突等の工事がいらないため、イニシャルコストも安くなります。
これほど書いても滅多に起きない停電で使えないのか(計画停電以来当地では停電はありません)と言われる方がいるでしょうから、明日は無電源のペレットストーブ(商品化されている)を紹介します。
灰掃除がいることと燃料補給が必要な事以外は、ほぼエアコン感覚で使えるオートマチックなペレットストーブ。
コメント
無電源のペレットストーブというと、見た目がまるでロボットみたいな、“あの”機種でしょうか?
> Mr.トリデさんロボットみたいな「あの」機種です。
質問しておきながらリアクション遅くなって、大変申し訳ありませんでした。薪ストーブとペレットストーブの対比を詳しくわかりやすくご解説くださって、ありがとうございました。
> sna*****さん
ペレットと薪ストーブ両方焚いていて、比較のできる店舗はまだまだ少ないですし。薪ストーブ屋さんはあまりペレットストーブに関心が少ないです。ユーザーさんのご理解もまだまだです。参考になれば幸いです。