温泉浴室の改修

WORKS

 前回書いたように、営業中の温泉浴室改修は最小限の期間ですることが求められるから。大浴場や露天風呂は次回に回して、今回は家族風呂だけ先行して直すと聞いていた。

 現場へ着き、早速風呂を見せていただく。築10年という浴場は、思ったほど傷んでいなかった。石材の溶出はあったが、酷いものではない。まだまだ10年はもちそうだ。コンクリート目地はさすがにだいぶ侵食されていたが、難しい工事にはならない模様。

 オーナー様が直したいのは、洗い場のカウンター板や背板がメインだった。つまり板張りで造作したそれは、10年も経てば木だから変色するわけで、それが嫌で、アクリル板を切って見えないようにパックしてあった。

 青森県・酸ヶ湯。秋田県乳頭・鶴の湯温泉、玉川温泉。成分が濃かったり酸性が強かったりする温泉だ。行って見ると、古い建物だから当然と言えば当然だが木造である。木造がそれだけ長く持っているという事実。
 個人的な見解だが、私は金属やコンクリートを使わない木造作りが、こうしたお湯の成分が強い温泉にはもっとも適しているのでは、と考えている。

 但し石を使ってそれなりの美観を保っているのに、板だけ変色して醜い、という気持ちもわかります。

 

 さて肝心の家族風呂を最後に見たわけだが・・・・・ここで愕然として言葉に詰まった。

 圧倒的に狭い!奥行きは3mあったが、両側の壁は両手で同時に触れる1.4mしかない。勉強して寝るだけの予備校の寮か、独居房のよう(失礼な言い方お許しを、まさかオーナー様読んでないでしょうね?)。
 これは、どんなに素敵な石貼りやタイル貼りの装飾を施しても・・・・・。カップルや夫婦が温泉の良い思い出造りに貢献できないのではないか・・・・・・。

 寝湯にしてしまおうか、いっそ洞窟風呂の方が良いかも、別府には蒸し湯という洞窟サウナもあったけ、そんなことを頭の中でグルグル考えていたが・・・・やっぱり巧くいきそうにない。

 「これ壁壊して浴室広げませんか?」と提案してみた。

 それだけの予算はない、と一蹴。

 考えに詰まり、正直に思うところを述べてみた。勿論オーナー様は私になんぞ言われなくたって、ご承知のことである。

 このホテルは修学旅行生が経営の柱であると言う。ハンディがある子や生理や体調不良の子が居るから、そうした子の為に使っている。しかし厚い自然石貼りであるため浴槽も洗い場も狭くなってしまった。現状のスペースの中で、二人がちゃんと入れるようにして欲しい。カップル等の使用は考えなくて良い。

 さすがに経営者様は、分析とビジョンがハッキリしている。

 ならば、と浴槽の大きさや位置。使う材料の厚みや納まり位置・洗い場の高さなど現場でラフなプランを提案し、その場で改修の方向性が即決となった。

 写真は昨年、デザインさせていただいた別の宿のスペイン風風呂。大理石と極小のモザイクタイルが雰囲気だしてます。

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