チタケ 発生地拡大

TOWN

 常連さんにはお馴染みの話題。
 
 すっきりとしない天気が続いておりますが、当地の夏を代表する山の産物、チタケが生えてきました。

 これを求めて深山に分け入り、命を落とすことも時々あるという。たまにスーパーや直売所に並ぶのを見ると、輸入マツタケ並みの値札がついております。

 手元にあるキノコ図鑑にも、栃木県では異常なまでに珍重する、とも書かれておりその執着ぶりが伺えます。
 一方で秋田山中で出会ったキノコ採りのおじさんにチタケを見せると、「そりゃ食えねえ」なんて一蹴されたこともあり、「栃木では人気キノコだ」と言うと、「栃木の人は変なもの食うんだね」なんて言われたことあります。

 実際焼いても、煮てもキノコ本体はまったく美味しくないです。このキノコの味わい方は、「乳茸」チチタケの正式名称が示すように、触っただけで本体から滴りだす乳液にあります。

 これが濃厚な出汁となる。

 一般的な食し方は、たっぷりと油を引いてバラバラにしたチタケを炒めます。ナスの短冊にしたもの、それから豚コマ肉かひき肉も、一緒にいれるとこれがまたマッチします。
 砂糖とみりんで気持ち甘めに味をつけ、めんつゆを加えて出来上がり。

 この汁に、ウドンや蕎麦、そうめんなどをつけていただくのが王道です。

 所詮 出汁 のためのキノコですから、私は遠方の山奥にまで行く気にはなれません。それほど暇ではない。

 でもこれは本来里山のキノコでした。子供の頃裏山には蹴飛ばして歩くほど自生していたものです。
 減ってしまったのは、乱獲や森林伐採ばかりでなく、里山を手入れすることがなくなったからです。

 農家と言うと、田畑、が思い浮かびますが、実は雑木林も大切な資産でした。薪や炭を採るために間伐し、家畜の肥料のため、下草を刈り、堆肥のために落ち葉を浚う。
 こうした美しい雑木林にいくらでも生えていた。言うなれば、数千年人間と共存してきたキノコだったのです。

 そうした里山の手入れをしなくなって数十年。チタケは激減しました。

 私が、今の家を建てる前に、予定地の雑木林に行くと、北側の市道に面した部分だけ異様に綺麗だった。近所の人が、落ち葉を浚うために利用していたのです。

 この部分の雑木を風除けに一列残しました。幅3mほどです。家を建ててみると、南側の大部分残した林部分にはまったく生えないのに、この一列の木の下にだけ毎年チタケは生えるのです。

 それを見て決意しました。チタケが林全体に自生するまで、草を刈り、落ち葉を浚うぞ、と。

 以来5年経ちました。そして今年。

 初めて東側の林の中で、チタケの発生がありました。小躍りする位嬉しかったのは言うまでもありません。

 タラノメ、ヤマウド。この自生地拡大は結構容易かったけど、チタケは5年かかった 5年ですよ。

 さらなる発生地拡大用に、3株くらい残して食しました。まあ年1,2回くらいは郷土の料理を作らないとね子供のためにも。

 

コメント

  1. くわでん より:

    「ローマの道は一日にして成らず」と言いますが、一度荒廃したものを復元させるのに、5年!
    地道な、素晴らしい実践ですね。
    特別の事としてではなく、人が日々の生活を送る上での必要作業に織り込まれていた事が、里山という独特で複雑な自然環境を生み出したんですね。
    人の手が入ることによって守られる多様性に満ちた自然、またその自然を上手く利用しすることで豊かになっていく人の生活、この循環を大事にしたいですね。

  2. kouda より:

    仰るとおりです。言いたいことを代弁してくれてありがとう。

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