孤高の野良猫 逝く

当家に、二年ほど前から野良猫が徘徊している。
止めろ、とは言ったのだが、女房が餌を与えていた。
しかししっかり野良猫根性が染み付いていて、まったく人間に隙を見せることはない。
何度かめ、そいつの顔を見ると、思わず吹き出してしまった。
白毛なのだが、黒いブチが入っている。目の上まつ毛あたりに、墨書でそれも書家が書いたように「八」の文字が・・・
背中の黒ブチも、黒い丸い斑点が二つ繋がっていて「8」の字のようだ。
それでネーミングは「ハチ」
一週間に一回位、ぷらりとやってきては餌をねだった。
定位置は、給湯器の上。ここなら勝手口から餌が運ばれてきても最短距離で飛びつける。さらに敵の接近を即座に見通し、逃げることができる。
結局筋金入りの野良猫で、昨年だったか、頬を大きく切り裂かれて血だらけになってやってきたり、他の猫と良く喧嘩をしていた。
 
二年間そうして餌をやっても、私たち家族に隙を見せることはなく、手など出そうものなら、即座に引っ掻かれた。
二度ほど絆創膏を貼ったものである。猫の「ニキータ」だったなあ・・・メスだと思う。
先の日曜日も、薪を薪棚へ仕舞っていたのだが、クールに給湯器の上で見ていた。
 
 
明けて次の月曜日。仕事帰り、買い物などあるので、普段は通らないんだがたまたま旧道を帰った。
虫が知らせたのかもしれないなあ・・・。
杉並木街道の十石峠を越えると家まであと1km位。
路上に轢かれた猫の屍が・・・
咄嗟にブレーキを踏む。
停車余地などないが・・・駆け下りていた。
「ハチ」だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 
行動範囲が広いのは知っていた。動きも用心深く隙がない。野良猫中の野良猫だったのに・・・。
車に轢かれるなんて・・・・。
屍はまだほんのり温かった。
 
二日後。杉並木の巨木の根元に、埋葬した。小さな墓石を建てて・・・・・。
このこと
は誰にも言っていない。
「ハチこの頃来ないねえ・・・」その女房の一言があったとき、・・・・どうしようか・・・。
私は悩んでいる。
いつの間にか、居なくなってそれっきり  のほうが良いのだろうか。
 
人間に飼われてきた愛玩動物だから、お互いにゴロゴロしあって暮らしていきたいだろうね。
その方がお互い幸せだ。でも幸せでない猫も一杯いる。捨てられたり、いじめられたり、生まれながらに孤児だったり・・・・。
 
そんな境遇で精一杯生き抜いてきた「ハチ」 ツッパリ通してきた野良猫。媚びず、なびかず、己だけを信じて・・・
オレはお前の生き方に感ずること多かったよ。
さようならハチ。

 

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