日本一の秘湯へ

LIFE

 黒部川の増水から逃げて、転がり込んだ薬師沢小屋は、小さな小屋だ。係りのお兄さんに聞くと我々二人でちょうど平時の定員のようで、詰めてもらったり他の人に迷惑がかからないのは幸いだった。

 もうすでに夕食は終わっている時刻だから、静粛かつ速やかに寝床の二階に向かおうとすると、よろけて右の壁にぶつかってしまう。

 ここに来てザックの重みに負けたか?
 それとも飲みすぎか?
 はたまた冷たい沢の中を歩いてきたので関節が麻痺したか?
 一日の疲労がどっと来た?

 なんて考えながら今一回ザックを右肩に担ぎなおして進む。

 あれ?二歩目にまた右壁にぶつかる?????。訳判らずとりあえずザックを降ろしてみる。

 えーーーーーー。なんと、ふらついているのは私ではなかった。小屋のほうが10度くらい床も壁も傾いていた!!!!!。

 雨の中黒部川に泊まるのは命知らずだが、地震大国の日本でこの小屋に泊まるのも勇気がいる ぞ。

 登山道から屋根に飛び降りられそうな位谷あいに建っている小屋だから、雪の重みで沢側に押し出されるのだろう。

 さて一夜明けると、沢は何事もなかったように静かに流れている。

 ゆっくり朝飯など作っていると雲が切れてきた。とそのうちに真っ青な夏空が広がりだす。

 俄然やる気出てきた!

 今日は、本当の目的地に向かう。

 今回の山旅の一番の目的地。それは「高天ヶ原温泉」

 温泉は好きだが、それほど綿密に全国の湯を調べているわけではない。

 でも恐らく「普通の人が簡単に行けない」=秘湯とするなら、きっと日本一の秘湯であると思う。

 寄り道せずに向かっても、私の足で12時間位かかる計算である。

 北アルプスの黒部川・黒四ダムのはるか上流。水晶岳と薬師岳という3000m級の名峰に挟まれた湿原の脇に自噴する。日本で3番目に高い標高にある温泉であると言う。

 大東新道という、黒部川沿いの枝沢を何度もアップダウンするコースもまたキツイ。そして2200mの高天ヶ原峠まで登り返せば、後は降りだけ。

 着いた「高天ヶ原」はとても美しい所だった。

 「アルプスの山の神々が集うカフェテリア」。絶対神々ここで交歓したり和んでいるよ。

 こんなに美しい所とは知らなかった。ここなら温泉もあるし、ひと夏山小屋番人しても良いなあ。

 先人は、よくぞ名付けたと思う「高天ヶ原」ぴったりのネーミングだ。

 温泉はさらに20分ほど下った所の枝沢の脇に沸く。

 川原の石を無造作にセメントで積んだ大小5個位の湯船がそこにあった。

 極楽・極楽。アプローチの長さが感激を倍化させているのは間違いない。

 が、どうだこの雲ひとつない、宇宙とダイレクトに繋がっているようなコズミックブルーの空・空・空。
 これ以上ピュアなグリーンはないというほどのカラマツの緑。

 こんなロケーションにめぐり合えた奇跡に感謝。 

 長風呂はできない気質だが、一時間も楽しんでしまいました。

コメント

  1. 〆KoolSky より:

    初めまして♪
    キレイな景色ですね♪
    温泉も気持ち良さそう♪
    黒部方面今計画中です。
    また遊びに来ます♪

  2. kouda より:

    何か参考になることあれば、情報提供します。遠慮なく質問ください。

  3. 〆KoolSky より:

    ありがとうございます
    気兼ねなく聞かせて頂きます。
    嬉しい

  4. とっさ より:

    この温泉もぜひ浸かってみたいものです。

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