左官技法「研ぎ出し」の解説

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 昨日の写真で、腰壁が小豆色していましたね。これは「研ぎ出し」という左官の仕上げ技法です。最近あまり使われないので、初めて聞く、という方も多いでしょうから。今日はこの解説です。
 
 現代でも普及している同じ左官技法に「洗い出し」があります。
 これは丸い天然砂利をモルタルにして伏せ込み、セメントが硬化しきる寸前に砂利の上面部分だけを2-3mmだけ洗い取って、砂利の上面だけを露出させ仕上げる工法です。仕上がりは砂利が露出しているので凸凹していて滑り辛く、床面に適しています。
 
 これに対し「研ぎ出し」工法は、モルタル硬化させた上で、表面を削り、磨き込みます。「洗い出し」が砂利の表面の色や凸凹を活かす、のに対して「研ぎ出し」はピカピカに磨かれたモルタルの断面を見せる。砂利もカットされ、内部の色・断面を見せるわけです。一枚の岩石を磨いたようにツルツルになりますので壁面に適してます。   
 
 ちょっと昔はこの作例のように、風呂や、流しに使われました。今みたいに合成樹脂が発明されていなかった時代のことです(私が幼少の頃まではよく作られていた工法です)
 
 この研ぎ出しで、見栄を出そうとすると、石灰に地味な砂利では、映えませんね。そこで石灰の方に色粉をいれてベースに色を付け、映えるように、粒の揃った細かな白い砂利や色の派手な砂利を加えてモルタルを作ると↓のようなあたかも一枚板を削り出し、磨き込んだような石面になるわけ。天端をR局面に仕上げてますね

 配管を通したり、崩れたり、と補修が必要なんだけど・・・・・・・・これは全く同じように作れません。
 ベースは小豆色しているので、赤の顔料が入ってますが・・・配合量は不明。砂利もどこの砂利なのか????石灰もどこの山の石灰なのか・・・・・・・・全く同じどころか、現行の色合いに近づけるのも相当困難だからです。これをやった職人にしか原料や配合割合はわからないからね。
この古の左官職人技に敬意を捧げ、これを生かしたリフォーム作業を続けております。

コメント

  1. sna***** より:

    懐かしいです!見覚えあります!「そんなもんだ」と思っていましたが、「研ぎ出し工法」という技術が使われていたんですね。深い小豆色にちりばめられた細かな砂利、暮らしの中にこんな風にさりげなく見事な技術と美しさがあったんですね。こちらのブログで色んな事を知り、いちいち感動してしまっているsnaですA^^;)修復過程で色の調整などご苦労を重ねられていらっしゃるようですが、後の世代の職人さんたが「修復跡がまたよく出来てる!」と唸るように、頑張ってくださいませ。

  2. kouda より:

    > sna*****さん
    「研ぎ出し」の名のごとく、電動工具がなかった時代は「砥石」で磨いたと思われます。どれだけの手間がかかったのか・・・・・私とて想像できません。
    後世の職人に笑われないように、予算内、という制約はありますが。プライドを込めて作業に当たっております。浴室は今週末には仕上がりをお見せできるかと思います。何時も応援ありがとうございます。

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