工事代金は物納

LIFE
 ちょっと前に行った工事は、陶芸家の卵に手を貸してやって欲しい、というものだった。
 
 お金はないが、才能はある、という女流陶芸家の自立のための第一歩、三日間火を入れ続けるという焼き窯を手作りするのだが。その基礎工事を依頼された。
 
 他所からこの街に来て、ここで窯をつくり自立する、というのだから応援したくもなる。まして女の子だし・・・。
 
いやいや「異性に弱いんじゃなくて・・・・・」
 若気の至りで走ってきたけれど・・・気がつけば自分も結構良い歳だ。町のため・・・・、若者の自立のため・・・私に応援できることあるんじゃないか・・・「大人」としての立場を自覚させられたのだ。
 
 材料費と職人手間の実費だけいただき、「残りは出世払い。作品できたなら持ってきな」ということにした。
 
 それが忘れていた今日突然届いた。墨書の礼状と共に。
 信楽系の土を使った素敵な茶碗だった。芸術系には疎い私だが・・・力作であることはわかる。立派なものを頂いてしまった。
 
 「ありがたくいただく」とは言ったが。ちょっと後悔もした。「気に入らなくて割ってしまうようなもので良かったんだ・・・けど」 でもまあいいか。信長・秀吉の時代には、国ひとつもの価値があったという茶道具。のちのちこの茶碗。工事代金など問題じゃない価値を持つかもしれぬ。
 そんな日を楽しみに、茶碗を眺めて生きるのも悪くないかも・・・・。
 

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