昨日紹介したカレー店には、いくつか材料を納めさせていただたのだが・・・実は最初から不安を抱えていた。
店舗内部の壁、天井、そして土間と内部のほとんどの面積を占める仕上げ材が、メーカーにおいても新しい商品であり、私にとっても初めて取り寄せる材料であったことだ。
昨日の書いたように、幾何楽堂さんの造作は、自然界で歴史を刻んできた物だけが持つパワーというかオーラにあふれているから、小手先だけで綺麗に見せるような建材はまったく似合わない。
厚化粧のコギャルは、どう逆立ちしても大女優のスッピンにはかなわない、という理屈である。
壁と天井材は、自然の黄土としっくいと海藻糊で作られた「洛土」という製品を、そして土間には真砂土と天然砂利を使用した「土間タタキ工法」を薦めたのだ。
古来の日本塗り壁材というのは、京都界隈で採れた天然土を主成分にしている。しかし現在はそれに似せた色粉を添加して作っているが、これはその本来の京都土を主成分にした壁材である。色粉は入っていない。
私はこれっきゃない!と思ったのだ・・・・・が・・・・・。
材料を収めて、しばらくしたら、左官屋が頭を抱えてやってきて言う。
「なんだ、あの材料。まったくよろしくないね。あれは材料が悪い、俺の腕のせいじゃないからなあ。あんなんで客は怒らないのかな、俺は知らないよ」
などど言うのだ。
心配になって見に行った。
壁は粗めの黄土が入ったもの。天井は同じ色の細かめの土が入った同じ製品であるが、左官屋が言うように、天井の方がはるかに薄くみえるし、その色むらがはっきり見える。
確かに、左官屋としては酷い仕上がりに見えたことだろう。
まあ、良いも悪いも、判断するのは私ではない。
そのままトイレを覗いてみた。こちらは珪藻土入りの一般的な壁材で塗ったのだが、
アレレ。こちらも同じように鏝ムラも薄らついて、左官屋の手による仕上げとわかるのだが、さっきの壁を見た後では、随分人工的な、科学的な仕上げ材に見えてきてしまうから フシギ。
かくして全部が仕上がり、訪れた昨日の記事の夜。
店内は、日本でも、インドでもない。しかしながら間違いなくオリエンタルである不思議な空間に仕上がっていた。
幾何楽堂マジック!!!!。
日本のように建材が溢れている国で、それを使うと、イタリアンでも中華でも、皆同じようなイミテーションだらけの店舗になってしまう。
この店は違った。アジア人が、身近な素材・木や石や土を使って作りました的なテイストに満ち溢れていたのである。
天井の色むらも、ハマりすぎるくらいはまっていたのだ。
またも幾何楽堂マジックに感心するのだった。
夜間の撮影につき、その雰囲気は伝えられません。
現物は、宇都宮市平松本町「ぎんなん屋」さんにてご確認ください。
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