遺跡の壁画など何百年も残っている彩色のものは、ほとんどが「顔料」という無機質(ほとんどが鉱物の素材の色)が使われております。それは産地が限られていたため、高価なもので一般庶民には手に入れられないものだったと思います。それなんで東洋では墨絵が多いんですね。墨の主原料は炭なんで、本来は有機質なんですが、製造過程で、有機質を分解、カーボン(炭素)を高純度で残すので、経年変化が少ないんですね。
それは建築にもいえることで、現在素材のまんまの家というのは少なく、色とりどりですが、昔は余程の権力者しか色はつけられなかった。そんな中で、黒の濃淡でデコレーションしたのが、「黒漆喰」です。黒でも白でも、強度などは遜色ないです(入れすぎたら弱くなりますけど)。汚れが目立たない、という選択理由もあるかもしれません。でも多くの理由が「カッコ、見た目」のおしゃれ感覚だったのではないでしょうか?。また黄色や赤など。その土地でとれた土を配合した色漆喰も存在します。
昨年来改築が続いています日光市の文化財の家。ようやく我が社のパート(まず左官工事)が廻ってきました。この家の外壁は黒漆喰で塗られており、それは内部にも使われておりました。施主様は最初、珪藻土を始め幾つかの壁材料を検討したんですが・・・・。
やっぱりというか、予想通りというか、こちらの誘導がうまくいったというか、黒漆喰に戻ってまいりました。そこで早速先週の中国地方遠征の勉強の成果が役立ちます。足立美術館の後に、古民家建築を勉強しようと「小京都」と呼ばれる街を訪れておりました。その街の写真を紹介します。
こちらの作例は濃いですね。一階の壁が黒というよりも藍色ぽいので、顔料の群青が混入されているのかもしれません。
こちらは墨の色が薄い。つまり黒漆喰といっても添加する墨の量で濃淡が決まるわけです、水墨画と一緒ですね。こちらは白のまんま。
そしてこれは私もビックリ。鏝ムラをつけるというのは、最近珪藻土壁が流行り、また南欧の家のテイストが輸入されてから、かと思ってました。100年以上前の日本の左官屋も色ムラ、鏝ムラ仕上げやってたんですね。
そんな作例を見てもらい、そして墨と漆喰の配合をグラム単位で調合して「塗板」を作成。↓どのくらいの色合いをどこに塗るか、施主様に決めてもらう、の図でした。。
上から松煙墨(松を燃やした煤から作ります)13%、5%、2%です。まだ一日目のため、もう少し薄くなります。
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