地元栃木の銘石に「大谷石」がある。柔くて加工がしやすいので、昔から建材として利用されてきた。この辺では、蔵といったら大谷石の石蔵が当たり前である。
近年では、薪ストーブの炉台としても利用されることが多いようだ。それ自体は何の問題もないが、石の特性を解っていないユーザーも多いのでちょっと注意点を書いてみる。
大谷石は凝灰岩。つまり火山灰が堆積圧縮されてできた石である。不純物が多く比重も軽い。つまり強度がない・吸水率が高い・鉄分が錆びるので、掘りたてとその後では色の変化が激しい。という弱点もある。
炉台として使う際は、こうした弱点を理解して使って欲しい。
また勘違いしている方が多い点が、「石蔵に使われる=火に強い」ということ。
ソープストーンの代わりに薪ストーブの炉内に使っては、なんて御仁がいたが、全く不向き。
「火に強い」というのは、例えば結晶系の御影石がそのシンプルな組成から「硬い」石となっている。しかし組成が単純な分各々の熱収縮の差が出やすく、火で炙られると簡単に剥離、破損する。「硬いけど熱に弱いのが御影石」。
逆に、不純物が多く含まれ、弱く圧縮されて出来た石だからスカスカで、逆に加熱で割れにくい 「弱いけど熱に強い」のが「大谷石」というわけだ。
火に強いから、石窯などに適している、と考えるのが、これがまた違うのだ。蔵に使われてきたのは、耐火性もあるけど、ほかの特性もある、水分を吸うから「調湿性」そして灰成分と内包空気が多いことで得られる「断熱性」の要素が多い。
つまり熱が伝わりにくい(熱しにくく)、また表面積が広い(凸凹)ので冷めやすい、という性質もある。大谷石で作った石窯の販売品もあるし、自作例も多いと思うが。私がオススメしないのは、こうした特性が向かないと思うからだ。逆言えば、炉台には、向いている特性とも言える。
実際そうした窯を焚いてみると、相当な時間の予熱が必要だし、その割に実際焚ける時間が意外なほど短い。
これから石窯を作ろうという方は、炉内内部には大谷石は薦めない。耐火レンガや耐火モルタルのほうが、はるかに比重が高く、つまり熱を貯めやすく、逃がしにくので、そちらを使うことをオススメする。
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